ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「すみません。……いえ、本当に専務は桐ケ谷さまのことを大切に想っていらっしゃることが、ヒシヒシと伝わってまいりましたので嬉しくてつい。……よかったですね、結婚したいと思える女性と巡り合えて」

驚きを隠せない。……池田さんの目に俺は、すみれが好きで大切でたまらない。そう見えるのだろうか?

「あの……俺、すみれのこと好きなように見えますか?」

思わず聞いてしまうと、池田さんは目を丸くさせた。


「見えますかもなにも……だからこそ、結婚を決められたのですよね?」

逆に聞き返され、返答に困る。

俺はすみれのことをひとりの女性として好きだから、結婚を決めたわけではないから。

「もちろん彼女のことが大切で、この先もずっといっしょにいたいと思ったし、守りたいと思ったからこそ結婚を決めました。……ただ、正直よくわからないんだ。人を好きになるって感情が」

親友とすみれ以外に、初めて話す本音。

けれど池田さんだからこそ聞いてほしかった。……そして教えてほしかった。
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