ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
顔を上げ彼を見れば、俺がすみれに話していないと理解したのか、池田さんは眉根を下げた。

「まだ……でしたか。差し出がましいことと承知しておりますが、私は一刻も早くお伝えした方がよろしいかと」


「……わかっている。父さんや母さんにも同じことを言われているから。だが、これは約束だから。……だから話すべきか迷っている」

箸を置き、椅子の背もたれに体重を預ける。

すみれとの結婚話を聞かされた時、ある約束を取り交わした。

その話を聞いたからこそ、俺はすみれと結婚したい。この先の未来、彼女をずっと守っていきたいと思ったんだ。

「桐ケ谷さまのことが大切でご心配なのはわかりますが、真実を伝えることも優しさですよ」

真実を伝えることも優しさ……か。

だが、本当にそうなのだろうか。知らずにいた方が幸せなこともないだろうか。

悩みに悩んでいると、なぜか池田さんは俺を見てクスリと笑った。

「え、どうして笑ったんですか?」

思わず聞いてしまうと、彼は口元に手を当て答えた。
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