ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
だってやっぱり信じられないから。一弥くんが私を好き……だなんて。

さっきまでとは違い、一弥くんは私から視線を逸らすことなく真剣な眼差しを向けてくる。

そして騒がしい店内で彼は私の様子を窺いながら聞いてきた。


「俺、ずっとすみれのことが好きだったから、お前があいつのことを好きだってことはわかるけど、あいつはどうなんだよ」

一弥くんが言う“あいつ”は間違いなく謙信くんのこと。

誰にもバレていないと思っていた気持ちは、おじいちゃんだけではなく一弥くんにも知られていたようだ。

「あいつもちゃんとすみれのこと好きなの?」

「それはっ……」

言葉が続かない。答えはもちろんNOだから。謙信くんは私に恋愛感情を抱いていない。

なにも言わない私に確信を得たのか、一弥くんは畳み掛けてきた。


「やっぱりあいつはお前のこと、好きじゃないんだろ? ならなんで婚約なんてしていっしょに暮らしているんだよ。……辛くないのか?」

大きく揺れる一弥くんの瞳。

心配、してくれているんだよね? 一弥くん。
< 201 / 251 >

この作品をシェア

pagetop