ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
ズキッと胸が痛み、胸元に手を当てるものの、慌てて首を横に振る。

今は胸を痛めている場合じゃない。おじいちゃんが目を覚ましたのだから、早く病院へ行かないと。

貴重品をバッグに詰め込み、戸締りをして家を出た。道中、今日も会社に休むことを伝えて。



「あった、ここだ」

病院にたどり着き、向かった先は先ほど私と交代し、伯父さんといっしょに一度帰宅した伯母さんに聞いたおじいちゃんの病室前。

昨日の夕方、私と一弥くんが帰って一時間後におじいちゃんは目を覚ましたらしい。

それから医師の診察を受け、もう大丈夫でしょうと言われたと。

面会は特別に朝から承諾をもらい、伯父さんたちは一足先に元気なおじいちゃんと話をしたようだ。

おじちゃんと会うのは久しぶりで、ちょっぴり緊張する。

病室のドアの前で大きく深呼吸をした後、ドアを数回ノックすると聞こえてきたのは、「はい」と言う懐かしいおじいちゃんの声。

たった一言聞いただけで安心し、涙が零れそうになるのを必死に堪えドアを開けた。
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