ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

声が震える。それほど今の私に余裕などない。ジッと彼を見つめること数十秒。謙信くんは微笑み耳を疑うようなことを言った。


「結婚しようか」

「…………え」

結婚……？　夢にも思わないワードに頭の中がフリーズしてしまう。そんな私に謙信くんは繰り返した。

「すみれ、俺と結婚しよう」

「……っ」


二度言われれば、聞き間違いじゃないんだって理解できる。けれど疑問は次から次へと出てくる。

「結婚って……どうして私と？　それにこんな急に……」


私は謙信くんのことがずっと好きだった。でも謙信くんは違うでしょ？　そんな素振り、一度も感じたことがない。

なのにどうして結婚しようだなんて言うの？


混乱しながらも尋ねると、謙信くんは私の手を握りしめたまま話してくれた。

「じいさんからまだなにも聞いていない？」

問いかけに大きく頷く。


「そうか。……話すと長くなるんだけど、要するに世間一般的に言うと、政略結婚みたいなものかな」

「政略……結婚？」