ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
さっきから頭がついていけない。……でも、謙信くんが冗談で言っていないことはわかる。


素直にいえば、好きな人からプロポーズされたんだもの。嬉しくないわけがない。けれど手放しで喜べないのは、謙信くんに気持ちがないから。

それなのに私、この話を受け入れちゃってもいいのかな?


揺れ動く気持ち。それに気づいたのか、謙信くんは蕩けてしまいそうなほど甘い顔で私を見つめ言った。

「俺……すみれのこと、幸せにする自信あるよ。俺だけはなにがあっても、すみれの味方でいるから。……後悔させない」

あんなに揺れ動いていた心は、力強い瞳に打ち抜かれた。

不安がないわけではない。……けれど今、彼の手を取らなかったら、私はこの先ずっと謙信くんのそばにいることができないと思う。


私が断ったら、氷室さんは謙信くんにこれからもお見合いを勧めるはず。そこで謙信くんが気に入る人と出会ってしまったら? そのまま結婚してしまったら?
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