ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「だから氷室くんから話を聞いた時は、すみれにとってもいい話だと思ったんじゃ。……まぁ、謙信はなぁ……あの歳で本気の恋愛を知らないやつじゃが、悪いやつではない」

もしかしておじいちゃんも気づいている? 謙信くんが私に気持ちがないことを。

ジッとおじいちゃんを見てしまうと、フッと笑った。

「じゃがそこはすみれの頑張り次第だと思わんか?」

「……私の頑張り次第?」

オウム返しすると、おじいちゃんは大きく頷いた。


「すみれは謙信のことが本気で好きなんだろう? だったらすみれが教えてやればいい。本気で人を好きになる気持ちが、どういったものなのかを」

「おじいちゃん……」


本気で人を好きになる気持ち……か。謙信くんはおじいちゃんの言う通り、本当に今まで誰かを本気で好きになったこと、ないのかな?

私が知っているだけでも、たくさんの人と付き合っていたはずなんだけど。

イマイチ信じられずにいると、おじいちゃんは話を続けた。
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