ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

そう言うと彼は私の手を引き玄関へ向かっていく。

「そうと決まれば、今日は時間の許す限り、いろいろな場所へいこう。まずは腹ごしらえだな」

「ちょっ、ちょっと謙信くん？」

戸惑う私の手を引き彼は家を後にした。そして謙信くんの運転する車で向かった先は近くのカフェ。

早朝から営業しており、モーニングセットが多数揃っていて、多くの来店客が訪れていた。

「ここのベーグルサンドが最高なんだ。きっとすみれも気に入ると思う」


そう言われたものの……。ベーグルサンドよりも、さっきから周囲の、主に女性の視線が気になって仕方ない。でもみんなが見てしまう気持ちわかる。

ベーグルサンドを手にしたままチラッと目の前に座る彼を見る。

白のＴシャツに黒のジャケット。そしてジーンズにスニーカーとラフな服装にも拘わらず、一際目立つ。

なんというか、オーラがあるというか……。

食べる手はすっかり止まり、チラチラと彼の様子を窺っていると、ばっちり重なり合う視線。

途端に彼は顔をクシャッとさせ笑った。