ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
たまたま休憩する時間が合った時、何度か自分の分のついでに先輩の分も淹れたことがあるけれど、それは頼まれたからであって、自分から「淹れましょうか?」と言ったことはない。

余計なお世話かもしれないし……。でも――。

チラッと給湯室からオフィスの様子を窺うと、部長はお弁当を食べ終えたようで、新聞を読み込んでいる。

誰だって食後にはちょっと珈琲が飲みたくなるよね。……部長の分を淹れても、迷惑じゃないよね?


もう一杯珈琲を淹れ、砂糖とミルクは使うかわからないからひとつずつ手にし、ドキドキしながらオフィスへ戻る。

変わるって決めたんだ。さり気なく自然に「よかったらどうぞ」って言えばいいだけ。

そう自分に言い聞かせながら部長のデスクに近づいていくと、珈琲の香りに気づいた部長が新聞から顔を覗かせた。

目が合った瞬間、逃げ出してしまいたくなるも自分を奮い立たせる。

「あ、あのっ……! よろしかったら、その……」
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