ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

矛盾する想いに頭を抱えながら会社にたどり着き、エレベーターでオフィス階へ上がっていく。

目的の階に着き、降りてオフィスへ向かっていると前方には総務部の先輩たちの姿が見えた。

三歳から五歳年上の先輩たち五人だ。綺麗な人ばかりでちょっと近寄りがたい雰囲気。それに噂話が大好きで、いつも化粧室を占領しているのはあの五人が中心だから。

距離を保って歩を進めるものの、五人の会話する声は大きく嫌でも内容が届いてきた。

「仕事だるいよね。早く金曜日になってほしい」

「ねー。夜は合コンだもの。気合い入れていかないとね」

キャッ、キャッ騒ぐ先輩たち。

「でもどうせいい男集まらないでしょ？」

「うちの専務くらい、ハイスペックな男子が来ればいいけど、なかなかいないよね。そもそも合コンに来ないか」

突然謙信くんの話が出て、胸がドキッと鳴る。

謙信くんが女性社員に人気があることは、入社時から嫌っていうほど理解していたけれど、実際に聞くとへこむ。私と同じように謙信くんのことが好きって人は、たくさんいるんだよね。

落ち込む間に、彼女たちの会話はヒートアップしていった。