ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「その先輩がいてくれたから、私は仕事を頑張ろうって思えたの。私もね、そんな先輩になりたいって思っていて。……だから桐ケ谷さんの教育係を任された時は、精いっぱい頑張ろうって決めたわ」

そう言うと彼女は真っ直ぐ私を見つめてきた。

いつもだったら目を合わせていられず、すぐに逸らしてしまうのに、なぜか胸がトクンとなり視線を逸らすことができない。

そんな私に彼女は言った。


「配属当初から桐ケ谷さん、すごく肩に力が入っていたよね？　もしかして絶対ミスしないようにって気を張っていたの？」

「それは……」

図星を突かれ、言葉に詰まる。


「もちろんそれは大切なことだし、誰だってみんなミスしないように頑張っていると思う。でも時には失敗してもいいんだよ？　そのために私がいるんだから。……だからなにか困ったことや、悩んでいることがあったら、なんでも相談してほしい。今日の桐ケ谷さん、いつもと違っていたからずっと心配だったの」

「綾瀬さん……」

彼女の優しさに胸が熱くなる。
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