君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
ーーーそのままワゴン車はN市の中心部へと向かう。
「すみません、田代さん。 斉木さん。彼は、瀬名 和泉といって、俺の近所に住んでる幼なじみです。
今日、久々に会う約束をしていたんですが、さっきの事もあり外では会えないのでホテルに連れて行きます」
「はぁ?何の話してんの?」
(いつ、俺がコイツの幼なじみになったんだよ?)
あまりにも分かりやすい李人の嘘と、勝手な行動に、和泉は苛立ちそう李人に反論した。
「何の話って、それを聞くために今からホテルに向かうんだろ。 まぁ、着くまでゆっくりしててよ」
しかし、当の李人は涼しい顔をして和泉を宥める素振りをする。
そこには、和泉と李人が赤の他人である事を人に感じさせるような不自然さは一つもない。
現に、2人の男性は和泉が李人の幼なじみだという事を微塵も疑っていないようだった。
(………ここにきてまで役者かよ。 本当に面倒くさい、コイツ)
和泉はそう思い盛大にため息をついた。すでに車は走り出しており、和泉はN市の土地勘があまりなく途中で下車するわけにもいかない。
(………まぁ、いいか。 元々話があったのは本当だ)
無理矢理、そのように和泉は自身を納得させるとそれ以上、反論をしなかった。