君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………ハッ、また俺は何を考えてんだ」
そう言って、和泉は自分自身を嘲笑した。
(………別に、あの女が橘 李人をどう思おうが、俺には関係ない)
そのように和泉が心の中で自分自身に言い聞かせていた時だった。
ーーー不意に、和泉と李人の目線が合った。
和泉の姿を見た李人は、その目を大きく見開いた。
しかしその後、李人は他の方に目を向ける事なく和泉のいる方へと近付いてくる。
そしてーーー、和泉が気が付いた時には………李人は和泉の目の前にいた。
「なっ………」
その李人の一連の行動に和泉が戸惑っていると………李人は穏やかな笑みを浮かべたまま、その形の良い唇を開いた。
「………あぁ、ここにいたんだね?探したよ。 さて、行こうか?」
「………は?」
まるで意味が分からない李人の台詞に和泉は呆気に取られていたがーーー、李人はその表情の穏やかさとは裏腹に強い力で和泉の腕を引っ張り、黒のワゴン車の方へと連れて行く。
「おい!アンタ何してーーー」
「………良いから乗って。 遅れて申し訳ないです。 出してください」
李人はそう小声で和泉に呟くと、和泉を車に乗せ、自身もそれに乗り込んだ。