君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「ありがとうございます、斉木さん。マネージャーとして俺を育ててくれてる斉木さんのためにも頑張ります」

「おう、任せた! それより、隣の和泉君だっけ?さすが、李人の幼なじみだな。凄くイケメンだよ。 彼、芸能界とか興味ないの?」

「………斉木さん、和泉は物静かですから。そういうのはあまり」

「そうか〜。残念だな」

「………」

(………お前が、俺の何を知ってるっていうんだよ)

心の中でそうツッコミながらもーーー、和泉は斉木と笑い合う李人を見て違和感を感じ始めていた。


ーーー人気俳優でありながら、誰にでも、誠実に対応し、優しくいつでも穏やかな李人。

それが、和泉が今日見た李人の姿。

(確かに………、橘 李人は完璧だ。 あまりにも優等生過ぎて、ケチを誰もつけられない。 それも、コイツの一部なんだろう。ーーーだけど)

和泉は、そこで思い出していた。

初めて李人と会った時のーーー、暗に嫌味を含んだ不快な和泉の態度。

そして、今日の有無を言わさない抑圧的な姿勢で無理矢理、和泉の手を引っ張りここまで連れて来た李人の行動。

それは、李人の表向きの姿とはかけ離れており………和泉の心の中で引っかかり続けていた。


(………清廉潔白な人間なんてこの世にはいない。橘 李人はいい例だな)

和泉がそう思っていると、李人は和泉の方を振り向いた。

「………さて、 和泉。待たせたね。部屋へ行こうか?」

李人は物柔らかな笑顔でそう言うが、和泉の目を強い眼差しでじっと見ており、やはり和泉は李人に違和感を感じずにはいられなかったーーー。
< 102 / 660 >

この作品をシェア

pagetop