君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


和泉は、李人に連れられ今日、李人が泊まる客室へ入った。

シングルルームでは、一番広い部屋らしかった。
入口のすぐ右隣には黒のソファーベッドと、無垢材のローテーブルがあった。 左に見える白いドアは恐らく洗面所と浴室だ。

そして、ソファーベッドの正面から見て右斜め前には、椅子と横幅が広い天然木化粧板のテーブルがありその上に電話機と32型のテレビがあった。その右隣には冷蔵庫がある。
部屋の一番奥にはセミダブルのベッドがあった。

全体的にこの辺りにしては良い部屋でスタッフが李人の為に精一杯、配慮したのが見てとれる。

「うん、いいね。ここならゆっくり話せそうだよ。ーーー瀬名君」

李人は、そう満足げに言うとソファーベッドの方に目配せし、和泉に座れと暗に告げる。

その瞳はーーー、依然として力強くどこか鋭い。

「………へぇ。 やっぱ、さっきのふにゃふにゃした態度とはうって変わるんだ? ーーー猫かぶるの疲れない?」

ソファーベッドに座った和泉は足を組み、冷たく笑いながら李人に毒を吐く。

しかし、李人は椅子を持って和泉の前に座ると、物怖じする事なく、さっきと同じ瞳で和泉に微笑し口を開いた。

「………別に? 意識してたら自然にできてた事だから。いつのまにか染み付いた俺の一部みたいなもんだよ。まぁ、優葉は気付いてないけど。

ーーー全く、優葉は可愛いよね。君もそう思うだろ?………瀬名君」


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