君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

そこまで言うと、李人は再び和泉を鋭く強い眼差しで見つめた。 そしてーーー


「………だからね、 瀬名君みたいに中途半端じゃないんだよ」


普段の李人からは想像もつかないような低く威圧感のある声で、和泉にそう言った………。


「俺が、中途半端………?」

「そうだろ? 自分の気持ちを認める事もなく、俺にただ文句だけを言ってくる。
………俺はそんな事はしない。例え、優葉が俺の教師だろうと真っ直ぐにその想いと向き合う。
今までだってそうだった。 俺の従姉妹だろうと優葉だけを欲して、彼女に男として見て欲しくて行動してきた。
だから、お前のような中途半端な気持ちで優葉の前にいる男は一番腹が立つ。
もしお前が優葉を心から好きであるというのなら………俺はお前と正々堂々と勝負し、お前を潰すよ。でもそうでないのなら………今すぐに優葉の前から消えてくれ。目障りだよ」

そこまで言い、李人は和泉を睨みつけた。 それは、敵意以外の何物でもないと和泉は思った。

「………ッ」

和泉は唇を噛み締めた。どうしても李人への言葉を紡ぐ事が出来ない。

ーーー李人は、和泉が思った以上の熱く深い想いで優葉を想っていた。

対して、和泉は………優葉に対する自分の気持ちを認める事はどうしても出来ない。

(この気持ちを認めてしまえば、俺は………同じになる………)

ーーー"あの若い女の教師"を愛して消えた………"彼"と。


「………ッ、やっぱアンタの勘違いだよ。 俺は、違う………」

それが頭によぎった途端、和泉の口からは自分の心の奥にある想いとは違う言葉が紡がれたーーー。

< 109 / 655 >

この作品をシェア

pagetop