君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「笹原さん、瀬名 義家(せな よしいえ)って分かる?」
「せな よしいえ………? 聞いた事あるような………」
しかし、優葉は記憶を辿ってみるが中々思い出せない。
「まあ、あまり普段は聞かないしね。 瀬名 義家衆議院議員。 民和党の国会議員だよ」
「あっ!」
すると、優葉は思い出した。
瀬名 義家は、何度も優葉達の地区から当選している与党所属の国会議員だ。
町中ではよく瀬名の選挙ポスターが貼られている。
そして、瀬名が当選する度"また、瀬名 義家か"と半端諦めたように両親が呟いているのも聞いていた。
「そうですね。思い出しました。ところで、なぜその話に?」
「それがねえ………。 今日の笹原さんの担当生徒さんが瀬名議員の次男なんだ」
「え!?」
まさか、体験とはいえ担当の生徒が政治家の息子とは………。
これには、優葉も驚いた。
「え、っと………。 なぜ、私が?それに」
なぜ、政治家の息子が小さな学習塾に通うのか?
彼の両親がその気になれば、プロの家庭教師を何人も雇えそうだ。
いや、それよりも………、アルバイトの自分がなぜ担当なのか?
疑問だけが湧き続け優葉の頭の中は混乱した。