君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「り、李人君っ………」
「小春おばさん、 今から優葉を俺の家に連れて行っていいですか?今日は、久しぶりに夜あいてるから優葉と話がしたくて」
「いっ、いや、李人君、あのっ」
李人は戸惑う優葉を余所に小春とどんどん優葉を外へ連れ出す話を進めており、優葉は動揺を隠せなかった。
「良いわよ、もちろん! 良かったわね、優葉! あなた、色々落ち込んでたみたいだし、芸能界という修羅場を駆け抜けている李人君に話を聞いてもらいなさい」
そんな李人の提案に対し小春は、昔から気心が知れるであろう従兄弟の李人に悩みを聞いてもらうのが優葉にとって一番だと思ったのか、嬉々とした表情でそう答えた。
「いや、だからっ………」
(だから、李人君に会うのが一番心苦しいんだってば!)
「………落ち込んでた?」
優葉が心の中で嘆いている間、李人が小春の言葉に対し怪訝そうにそう尋ねた。
「そう! この子、ここ数日部屋から出ない事が多くて。 私も心配していたところなの」
「………なるほど。 それなら」
そう言うとーーー李人は優葉を見つめた。
李人は小春の言葉から何かを感じ取ったのか、先程までの穏やかな態度とは異なり………どこか有無を言わさない強い瞳をした。
その瞳を見るや否や、優葉の胸はドキリと大きく高鳴り、その場からまるで動けなくなった。
「………俺の家に行こうか? 優葉」