君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「母さん。 優葉、久し振りにここに来たから緊張してるみたい。 部屋に早く連れて行っていい?」
「フフッ、優葉ちゃんらしいわね? もちろんいいわよ! ゆっくりしてね。 今日作ったレモネードがあるから李人の部屋に持っていく? 優葉ちゃん、好きだったわよね?」
「あ、は、はいっ………」
「じゃあ、俺が持っていくよ。準備したら俺も部屋に行くから。 優葉は先に行ってて。ね?」
そう言って、李人は優葉の頭にポンと右手で柔らかく触れると、優葉に微笑み、夏子とリビングの方へと向かっていった。
(さすがだなぁ………李人君)
優葉の今の心情を素早く汲み取り、優葉が最もリラックスできる状態を、李人はいつも与えてくれる。
優葉は、いつもそのような李人に救われ………強く恋い焦がれてきた。
ーーー昔から、ずっと優葉と李人が一緒にいるからこそ。 二人がイトコ同士だからこそできること。
それを改めて優葉は感じ………そして、 李人への想いを閉じ込めておかなければならない事は重々分かっているが………リビングに向かう李人の後ろ姿さえ優葉は目を離せずにいたーーー。
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「おまたせ、優葉」
数分もしないうちに、李人はレモネードが入れられた二人分の四角のロングタンブラーを木製のトレーの上にのせて自身の部屋へと入ってきた。