君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「瀬名君は、最近また夏風邪をひいたらしく休みがちですが………笹原さんをとても好いていると思いますよ。
瀬名君は、僕からみて扱いが難しそうな子に見えましたが、 笹原さんの前では冗談も言ってましたし、よく笑ってましたので。
………瀬名様は反対されてましたけど、僕は笹原さんに瀬名君を任せて良かったと思っているんですよ」

そう言って、田倉は穏やかな笑顔を優葉に見せる。 その笑顔から田倉の言葉に嘘は何一つないと優葉は分かったーーーが。

「………そう、 ですかね?」

優葉は、田倉へ奥歯にものの挟まったような返事を返していた。

(本当に………瀬名君が、私のことを先生として好いてくれていたのならあんな酷い仕打ちはしないよ………)

そう思い、思わず唇を噛み締めた優葉を見た田倉は怪訝そうな顔をしたが、やがてまた、ふぅっと息を吐き微笑すると口を開いた。

「………笹原さん。あなたの謙虚さには脱帽しますが、あなたは、もっと自信を持った方がいい。
人があなたを褒めた事、 あなたの能力を認めた事。 それをもう少し疑わず素直に受け入れられたら、もっとあなたはそれを伸ばせる。
瀬名君の事はずっと、傍で見てきた私が言うんです。 ………間違いありませんよ。 自信を持って、これからもあなたらしく、彼に接してください」

< 172 / 660 >

この作品をシェア

pagetop