君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


優葉の実家へと李人が向かうと、小春が笑顔で出迎えてくれ、その後ろにどこかばつの悪そうな顔をした優葉がいた。

『………優葉、やっぱりいたんだね?』

李人は、そのような優葉の表情に胸が痛くなるのを感じながらもーーー優葉にできるだけ平静を装って話しかけた。

『り、李人君っ………』

『小春おばさん、 今から優葉を俺の家に連れて行っていいですか?今日は、久しぶりに夜あいてるから優葉と話がしたくて』

しかし、 優葉に話を聞くと決めた李人はこの機会を失ってはならないと畳み掛けるように小春にそう尋ねた。

『いっ、いや、李人君、あのっ』

『良いわよ、もちろん! 良かったわね、優葉! あなた、色々落ち込んでたみたいだし、芸能界という修羅場を駆け抜けている李人君に話を聞いてもらいなさい』

そして、小春が嬉々として言ったその台詞の一部をーーー李人は聞き逃さなかった。

『………落ち込んでた?』

『そう! この子、ここ数日部屋から出ない事が多くて。 私も心配していたところなの』

李人が再びそれを尋ねれば、小春が更に詳しく教えてくれた。

ーーー優葉に、ここ数日で部屋から出たくなくなる程………深刻な"何か"があったのだと。

(どうして………そんなになるまで、優葉は俺を頼ってくれなかったんだ。 昔はもっと、 悩みや心配事があった時は俺に一番に言ってくれていたのにーーー)




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