君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
(初めて握手を拒否された………)
和泉の威圧的な行為に対し、優葉は目を丸くした。
「た、大変失礼致しました!更に、申し遅れました。私、和泉様のお世話をさせて頂いている関本(せきもと)と申します。
この度、旦那様と奥様が共にお伺い出来ませんでしたので、私が参りました。
和泉様をよろしくお願い致します」
和泉の傍にいた50代半ば程の背の低い女性が申し訳なさそうに、優葉へ頭を下げた。
「い、いえ!こちらこそよろしくお願いします。 どうか、お顔を上げてください」
優葉は、苦労が絶えないと言った表情でひたすら謝る関本が不憫だった。
しかし、和泉は変わらずツンとし、腕を組み遠くを見つめている。
(年上の女性にこんなにも頭を下げさせているのに、見向きもしないなんて………)
そんな和泉を一瞬、優葉は漫画等である自己中心の傲慢なお坊ちゃんではないのかと思った。
(でも………彼の目)
優葉は和泉の目を、とても冷たいと感じた。しかし、それ以上に陰りがあるとも思った。
これは、輝く青春時代を送る高校生の目ではない。
なぜ、彼はそんな目をするのだろう………。