君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………瀬名君」
「………」
「瀬名君。聞こえてるよね? 先生の方を見て下さい」
優葉がもう一度声をかけると、和泉は気だるそうにやっと優葉へと顔を向けた。
「何? 初っ端から説教?」
「初めまして」
「は?」
「初めまして。 握手をしたくなければ、まずはこれだけで良いよ。私に初めましてって言ってください。
………最初から目を逸らされたら、瀬名君の事が分からないよ。
挨拶して、そこで初めて瀬名君の事を知れるから。
全く知らない生徒に対して私は授業しない。それは、困るよね?」
取り敢えず、目の前にいる瀬名 和泉という少年を知りたい。
優葉は、その一心で和泉に強い口調でそう言った。
「ちょ、えっ?笹原さん?」
温和な優葉が、強気な態度で和泉に接するとは思わなかった佐倉は、慌てて優葉を止めようとした。
しかし、和泉はフッと冷たい瞳のまま微笑んだ。
「………へえ。アンタ、俺を脅すの? 見かけによらず良い根性してんね」
「………そんなのじゃないよ。ただ、瀬名君の事を知らないと私は授業しないって言ってるだけ」