君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
しかし、それでも………片思いをしていた頃より今の方が、李人は 優葉に会いたくて会いたくて堪らなかった。
やがて、李人はその答えに辿り着いた。
(きっと………、 知ってしまったからだ)
ーーー優葉が、 李人を想っていてくれた………それを知った時の心に広がった甘美さを。
その甘美さを知ってしまえば、まるでそれは一種の毒のように、優葉の想いを李人自身で更に埋めて………誰もその隙間に入らないようにしたい、と思った。
ーーー全く、 誰も。
そのためには、李人は優葉に出来るだけ会う必要がある。
「………そう。 アイツなんて、 瀬名 和泉なんてもってのほかだよ」
気付けば李人は、低く昏い声でそう呟いていた。
ーーー"瀬名 和泉"
優葉を中途半端に想い、 そして………李人よりも先に、優葉に口付け、優葉を傷付けた李人にとってこの世で今一番恨めしい男。
和泉との話を優葉から聞いた時、李人は全身の血が逆流するかのような怒りとこれ以上ない嫉妬心が湧き上がったが………それは、優葉と想いを確かめ合った事により一気に無くなった。
しかし、優葉は和泉にあのような事をされても………まだ諦めないでいる。
"先生"として"生徒"である和泉との関係を、やり直す事を。