君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………悔しいな、なんか」
気付けば李人は、そうポツリと寂しげに呟いていた。
(優葉の心には………まだ、どんな形であれ、瀬名がいる。 ………俺以外の男が)
そう思えば、李人の胸はギュッと締め付けられるように痛くなった。
ーーー優葉の心を、李人だけで埋め尽くしたい。
ーーー他の男の事なんて、微塵も考えないで欲しい。
そのような、 際限なく広がる自身の欲に………李人は苦笑いを浮かべた。
本来の李人の姿が………手にしたいもの、大切だと思ったものはとことん独占したい、というその思いが………優葉の事になればどこまでも、どこまでも広がり続ける。
「………こんな卑しい気持ち、優葉に知られたらいけないな」
李人はそう言い、心に平静さを取り戻す為、深呼吸をした。
和泉の気持ちはどうであれ、和泉との事は優葉が教師という夢を叶えるための大きな壁ーーーつまり、試練に違いない。
李人は、人気俳優になるというその己の試練をいつも、優葉がひたすら自身を切磋琢磨しながら目標にひたむきに向かっていく姿を思い出し、 頑張ってきた。
つまり優葉への想いと、優葉のそのような姿は………李人の夢を叶えるのに大きな役割を果たしたのだ。