君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

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その後、優葉を自宅まで送り届けた李人は父親の車を借り、急ぎである場所に向かっていた。

今日の夜までに東京へ帰り着かなければ明日の朝一の映画撮影に間に合わないのもあるが………何より、優葉の為に李人は動いていた。

「………確か、ここか」

ーーー李人が向かった先。 そこは、 優葉が通う大学のテニスコート前だった。

李人が、そこに向かえば………目当ての人物は直ぐに見つかった。

「わーーー!また、晴夏に負けた!!」

「やっぱ強いよ、晴夏!!」

「でっしょーーー? 出直してきな! なんてねっ」

ーーーそれは、 紛れも無い晴夏だった。

ちょうど、試合が終わったらしく部員らしき学生達と談笑しながらコートの外に出てくる。

「ーーーちょっと」

そして、 外に出てきた晴夏を………李人は呼び止めた。

晴夏は、一瞬見知らぬ男の登場に訝しげに眉をひそめたが………黒縁眼鏡の奥から覗く、忘れられぬ瞳に………息を呑んだ。

「………たち、 ばな君………?」

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