君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

ーーー間違いない。

李人だ………。

それを思えば、晴夏の目線は一気に李人に囚われた。

「え!? 誰!?」

「晴夏の新しい彼氏!?」

そのような晴夏を他所に、周りの女子学生が、色めき立って李人に注目し始めた。

「ん?俳優の誰かに似てる? えっと………」

そして、一人の女子学生が、李人を凝視した所で晴夏は、 ハッと意識を取り戻した。

「ごめん! あたし達急いでるから、ここで!」

李人の正体を知られまいと晴夏は思わず、李人の手を掴み、走り出していたーーー。


ーーーーーーーーーー

晴夏は、李人に連れられ大学から少し離れた場所にあるファミリーレストランに来ていた。

"久し振り、 篠村。 橘です。………突然で悪いけど、話がしたいんだ。 少し付き合ってくれる?"

李人は………晴夏を車に乗せるや否や、黒縁眼鏡を外し、そう尋ねた。

その透き通るような大きな瞳も………、 整った鼻形や唇も、変わらずとても美しい。

しかし、李人は中学の頃やテレビで観るよりも………また一段と色気を増し………大人っぽくなっており、 晴夏を一瞬で釘付けにした。





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