君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

そして、李人は噂通り性格も良かった。

『そのノート全員分運ぶの重そうだね、篠村。手伝うよ。 日直も相手が一人休むと大変だろ』

『篠村って、テニス部だったよね?大会近いだろ? 後の外掃除は俺に任せて、練習に行ってきなよ。大会、うまくいくよう応援してる』

今目の前にいる相手の立場をよく気遣い、優しさに溢れた行動。

李人は、それが他の男子生徒よりも群を抜いてできていた。

そんな李人を晴夏も男性として、"良い"と思う一人だった。

しかし、当時の晴夏には既に彼氏がいたため、他の女子生徒よりは李人を意識していなかった。

しかしーーー


『ーーー優葉』

『優葉。 一緒に帰ろう。 今日は、小春おばさん達遅くなるんだろ? だから暫く、うちにおいで? 母さん達も喜ぶから』

『あ、 うっ………うん!ありがとう。 でも、 李人君は何か用事は………』

『………ないよ、そんなの。 ね? だから、一緒に帰ろう?』

李人にとって、従姉妹である優葉の名を呼ぶ時や話しかける時に………いつもの柔らかく優しい雰囲気が幾分にも増すのは、気になっていた。
< 333 / 660 >

この作品をシェア

pagetop