君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
そして、李人は噂通り性格も良かった。
『そのノート全員分運ぶの重そうだね、篠村。手伝うよ。 日直も相手が一人休むと大変だろ』
『篠村って、テニス部だったよね?大会近いだろ? 後の外掃除は俺に任せて、練習に行ってきなよ。大会、うまくいくよう応援してる』
今目の前にいる相手の立場をよく気遣い、優しさに溢れた行動。
李人は、それが他の男子生徒よりも群を抜いてできていた。
そんな李人を晴夏も男性として、"良い"と思う一人だった。
しかし、当時の晴夏には既に彼氏がいたため、他の女子生徒よりは李人を意識していなかった。
しかしーーー
『ーーー優葉』
『優葉。 一緒に帰ろう。 今日は、小春おばさん達遅くなるんだろ? だから暫く、うちにおいで? 母さん達も喜ぶから』
『あ、 うっ………うん!ありがとう。 でも、 李人君は何か用事は………』
『………ないよ、そんなの。 ね? だから、一緒に帰ろう?』
李人にとって、従姉妹である優葉の名を呼ぶ時や話しかける時に………いつもの柔らかく優しい雰囲気が幾分にも増すのは、気になっていた。