君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

『ね! 晴夏もそう思わない? 笹原さん、調子のってるって』

当時の友人にそう同意を求められ、 晴夏は困った。

(………調子のってるっていうか、 ただ橘君は笹原さんの従兄弟だから気にかけてるって事もあると思うけど)

しかし、そのような事を今言ってしまえば、 今度は晴夏が目の前の嫉妬に狂った女子生徒達にターゲットにされる事は明らかだ。

(ただでさえ彼氏がいて、あたしは、目の敵にされやすい位置にいるんだから………ここは、同意しとこう)

(こんな広いクラスで笹原さんみたいに一人になるなんて、冗談じゃないし。 とりあえず、この子達といれば学校生活なんて楽勝だしね)

『………確かに。 そうかもね?』

『だよねーーーっ』

そう満足げに微笑んだ彼女らを見て、晴夏もまた、偽りの笑みを浮かべた。

そんな彼女らをまた見ながら晴夏は思った。

ーーーいつから、自分が本当に言いたい事や、やりたい事を誰にも言いだせなくなったのだろうと。

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