君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

教室に入るよりも先に、その中から声が聞こえ、晴夏は思わず立ち止まった。

(………サトシの声だ。 と、あと一人はーーー)

『そんなのな〜。 決まってるだろ、橘』

(ーーー橘君?)

李人と彼氏が二人で話す姿をあまり見た事がなかった晴夏は、驚いたものの物珍しさから、会話を聞いていたーーーが。


『顔だよ! 顔!』


直ぐに、 会話を聞くのでなかったとその言葉を聞いた瞬間………思った。


『………顔?』

『そう! 晴夏って、顔は学年でダントツで美人じゃん?
しかも、頭も運動も出来れば、身体のラインも最高! ちょっと気が強いとこあるから面倒だけどさ。
まあ、あの手の女って一緒にいるだけで自慢になるだろ!』

彼氏が、さも自分は誇らしい事を言っているかのように振舞っていたが………一方の晴夏は、一気に気持ちが冷え、虚しくなってゆくのをひしひしと感じていた。

(この男も………結局、あたしの外側しか興味ないんだ………)

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