君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

(やだ………。 何で、こんなに泣きたい気持ちになるの?)

晴夏は、 それ以上微笑み合う二人を見てられず教室に入ろうとしたーーーが。

『篠村』

李人に小声で呼び止められ、 晴夏は驚きで肩をビクリと上げた。
そして、仕方なく振り向けば真剣な表情をする李人がいた。

『………そこにいたって事は、聞いてたよね? 今の事』

『………っ』

『この後どうするかは………篠村次第だけど。俺は、 もったいないと思うよ、篠村が。 凄くもったいない』

『えっ………』

『もっといい奴を、篠村なら見つけられるよ』

『………!』

そう言った李人の声は………とても温か
かった。

それは先程、李人が優葉に向けていた笑顔のような………晴夏の知らなかったものだった。

『あり、 がとう………』

晴夏が心からそう言えば、李人はまた軽く微笑んでくれると優葉とその場を後にした。


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