君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「………好きじゃないヤツに、噂されてもな」

本音が、思わずこぼれた。
その瞬間を、遼馬は聞き逃さなかった。

「何々!? 嘘だろ!?和泉、好きなヤツいんの!?」

「ーーー!?」

思わず、声を張り上げた遼馬につられ、その場にいた生徒が一斉に和泉達の方を振り向く。 

「えぇっ………、うそうそっ」

「瀬名君、好きな子いるの?」

「うちの学校?もしかして、3組のめっちゃ美人の人かな?」

「ていうか、他の人といるのもかなりレアじゃない? あの男子も何者?」

次々に、女子生徒が小声でそう尋ね合うのが聞こえ、和泉はため息をはいた。

「遼馬………、声でかいよ」

「悪い、悪い! あんまり意外だからさ………。 俺も同時に噂されてるし、勘弁してくれよ。なっ?」

そう言い、なぜか女子のように目を大きく見開き、パチパチさせ、にこやかに微笑む遼馬。 

それを見、そういえば遼馬は、基本どんなことでも明るくジョークで返すヤツだったな………と和泉は、思い返した。

「………お前、一旦消え去れ」

………そして、いつもそれに対し毒づいて応えていたことも思い出した。

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