君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「お母さん、買ってこようか?」
「お願いしていい? 丸野スーパーでいいわよ、歩いて近いし」
「俺も行く。まだ明るいけど、夕方はこの辺車も多いし、不審者もいるかもしれない」
「あら、良いわね優葉! 今一番のイケメン俳優と一緒なんて!」
「っ、お母さん、茶化さないでよ………!」
(李人君と一緒にいるだけで緊張するのに………!)
優葉は、その気持ちに追い討ちをかけた小春を少しだけ恨んだ。
「あはは、俺はまだまだ勉強する事がたくさんありますよ」
李人がそう言った時、スマートフォンがなった。 着信音は李人の鞄からだ。
「すみません、少し失礼しますね。
ーーーもしもし、斉木(さいき)さん?え?今から急きょ、シーン14の撮影? 」
電話相手は李人のマネージャーで、李人をスカウトした斉木 透(さいき とおる) であった。
「………監督の判断なら仕方ないですね。 ええ、台詞は大丈夫です。じゃあ今から来て頂いても構いませんか? 場所はーーー」
(李人君、仕事が入ったんだ………)
久々に李人とスーパーとはいえ買い物ができると嬉しかっただけに優葉は落ち込んだ。