君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「あら!李人君ってば、またカッコよくなっちゃって!
今年の夏は帰ってくるかしら?
とにかく、絶対にこのドラマは観なくちゃ!ねっ、優葉」
「………えっ」
「優葉?」
「………わ、私テスト勉強あるから行くね!お母さん、行ってきます!」
「え?ちょっと、まだ早いんじゃない………って、優葉っ」
いつもより大分早く、大学へ向かう娘に戸惑う母の声をよそに、優葉は家を出た。
(でもどうせ、李人君はどこにいても何かの形で目に付くから意味ないか………)
「ッ、暑い………」
外に出ると、まだ朝だというのに、熱をもった太陽が容赦無くアスファルトを照らしていた。
だが、もう7月だということもあり無理もない。
「ちょうど………このくらいの頃だ」
"俺、俳優になろうと思ってる"
李人が初めての夢を………優葉に告げたのは。