君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
ーーー優葉達が中学2年の夏。
『学校帰り、芸能事務所にスカウトされたよ』
李人、優葉の家族が近くのファミリーレストランで夕食を共にしていた時だった。
ちなみに笹原家から橘家までは、徒歩五分圏内だ。
なので家族一同で外食することも、けして珍しくない。
『えーーーッ!?』
しかし、そのような至って普通の日常の中、突然飛び込んだ李人の告白。
それに驚いた優葉達の叫び声が、レストラン中に響いた。
確かに当時から李人は、近所や学校で評判の美少年だった。
しかし、優葉達の地元は埼玉県にある田舎町。
その周りは、基本的に畑や田んぼしかない。
車が無ければ近くのコンビニやスーパーにも行けない土地柄だ。
そんな辺鄙(へんぴ)な田舎町でまさかの"芸能界へのスカウト"。
スカウトした男性が優葉達の地元出身だったという。
東京の大手芸能事務所で働いており、帰省中、たまたま李人を見かけて声をかけたらしかった。
しかし明らかに、田舎ではあり得ない話だと、その場全員の意見が一致した。
なので、李人と優葉の両親共に"………お前、騙されているんじゃないか?" "新手の詐欺?"と次々に心配した。