君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
【夏の夜に近付く唇】
優葉が帰った後、 自室に戻った和泉はベッドに、うつ伏せの状態で飛び込んだ。
「………ったく、 調子狂う」
(ああいう自分が正しいと思い込んだ正義感を振りかざして、他人の心に土足で入ってくる奴には反吐がでる………筈なのに)
それでも、優葉を許してしまったのは………優葉が和泉の唇を受け止めようと震えながらも待ってた姿がとても真摯に見えたからだ。
そして、 しまいには一番聞かれたくない事を何度でも聞けば答えるんじゃないかと、優葉にほのめかしてしまう始末。
何より、今でもその姿と最後に和泉を見送ってくれたあの弾けるような明るい笑顔が頭から離れない。
「どうかしてる………」
(教師なんて………特に、若い女の教師なんて一番信頼ならない)
"あれ"が、"彼"の身に起こってからーーー、 和泉はずっとそう思っている。
「笹原………優葉。 笹原………」
なのに、何度も優葉の名前を呟き今日の出来事を思い出しては、心が温さで少しずつ満たされていくのを和泉は感じていた。
「………ッ、 クソ。今日はやっぱり調子が悪い………」