君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
(少しでも、心を開いてくれたんだ………!)
優葉の名前を呼んだのが、その何よりの証拠だ。
「………何ニヤついてんの? 気持ち悪い」
「気持ち悪くても、 もう何でもいい。私の名前を呼んでくれたから、今はそれだけで嬉しい。
だから、瀬名君が私に悩みを話したいって思ってもらえるまで、どんどん瀬名君に話しかけるから! 覚悟してね!」
「ったく、単純な女。 ………てか、帰りなよ」
「あ、 うん! 長く引き留めてごめんね。 ありがとう、瀬名君! またね!宿題ちゃんとしてきてね!」
邸宅に去りゆく、和泉の姿に優葉は笑顔でそう声をかける。
(良かった………。 ここに来て)
まだ、和泉が何に苦しんでいるのか分からない。
しかし少しでも和泉が、優葉に心を開きそれを話してくれる気になった事に優葉はこの上ない喜びを感じた。
(瀬名家への家庭訪問が成功したってことかな)
このまま和泉と良い信頼関係を築くことが出来れば、優葉が教師を目指すにあたり一つの大きな自信に繋がるだろう。
そして何よりも、生徒の力になれている事が優葉はとても嬉しかった。