君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

和泉は条件反射で、倒れかかった優葉を支えようとしたーーーが。 

「………っ、 触らないでっ………!」

優葉から出てきた拒絶の言葉に………和泉は絶句した。 

「一人で立てるから………」

言いながら、優葉はドアの手すりを使いゆっくりと立ち上がる。  

「ちょっと………用事思い出したの。 もう行くね………」

優葉は、和泉と目を合わせず不自然な笑顔を浮かべたまま、その場から立ち去ろうとする。 

(このまま………行かせたらダメだ)


ーーー優葉はこのままだといなくなる。


そう感じた和泉は、 後ろから優葉の手を握った。

「………行くな!!」

「………!!」

「………こっちを向いて」

「っ、瀬名く……… ………!」


「………優葉」


優葉の耳元でそう、和泉は囁いた。 

いつものように、柔らかく温かな声でーーー。 

「………瀬名、君………」

その声と共にゆっくりと振り向いた優葉。 

その顔は………すでに涙で濡れていた。 

< 589 / 660 >

この作品をシェア

pagetop