君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
和泉は条件反射で、倒れかかった優葉を支えようとしたーーーが。
「………っ、 触らないでっ………!」
優葉から出てきた拒絶の言葉に………和泉は絶句した。
「一人で立てるから………」
言いながら、優葉はドアの手すりを使いゆっくりと立ち上がる。
「ちょっと………用事思い出したの。 もう行くね………」
優葉は、和泉と目を合わせず不自然な笑顔を浮かべたまま、その場から立ち去ろうとする。
(このまま………行かせたらダメだ)
ーーー優葉はこのままだといなくなる。
そう感じた和泉は、 後ろから優葉の手を握った。
「………行くな!!」
「………!!」
「………こっちを向いて」
「っ、瀬名く……… ………!」
「………優葉」
優葉の耳元でそう、和泉は囁いた。
いつものように、柔らかく温かな声でーーー。
「………瀬名、君………」
その声と共にゆっくりと振り向いた優葉。
その顔は………すでに涙で濡れていた。