君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「う、ううんっ」
李人に柔らかな笑顔でそう言われ、優葉の胸は高鳴る。
(本当に………李人君の笑顔には昔から敵わないなぁ)
「でね、 優葉。 この前の埋め合わせにと思って………これを見つけてきたよ」
そう言って、 李人が優葉に見せたのはスマートフォンに収められた一枚のポスターを写した写真。
"R町花火大会"
綺麗な色取り取りの花火が夜空に花開く写真と共にポスターにそう書かれていた。
「近くの郵便局で貼られてたんだ」
「わぁ! 今年もやってきたんだね!この季節が」
「懐かしいだろ? 俺が、仕事で高校から上京するまでよく学校の友達を連れ立って行ってたよね。 ………でさ、これ今日なんだけど。 優葉と行きたくて」
「え? わ、私?」
「うん。埋め合わせって言ったでしょ。………それとも、他に一緒に行く彼氏でもいる?」
李人は優葉に思い切って、質問をした。 埼玉に帰ってから一番、優葉に聞きたかった事を。
李人は、表面上では平気な顔をして聞いているつもりだった。
しかし、心の奥はまるで槍にでも突かれたかのように音が大きく鳴り続ける。