君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


「………こんなにも、離したくないって思うのに」

「ーーーッ!」

和泉は、優葉に熱のある声でそう囁いた。 

離したくない。 本当は片時も優葉と離れたくない。 
本当は………今すぐにでも、優葉の唇を奪い、何度も繰り返し好きだと言いたい。 

どんなに和泉が優葉を激しく求めているのか………伝えたい。 

しかし、優葉の心の中にあるのは間違いなく李人だ。

その李人から受けた傷を治すことが優葉にとって最優先でもある。

そして何より………優葉は和泉のことは良い生徒で、後輩としか思っていない。 

その全てが、和泉が優葉へもう一度想いを伝えようとするのをどうしても思いとどまらせる。 

しかし、一つだけ今、和泉は優葉に信じて欲しいと思った。

優葉に………和泉はけして、李人のように優葉を離すことはないと。 

その思いもあり、抱き寄せる力が強くなる。

「………優葉。 アンタだけは………離したくない」



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