君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


「ち、ちょっと人が多いなぁって思って………」

「あ、あぁ………、 そうだね」

(参ったな………。 優葉が可愛すぎる…….)

一方の李人もその理由は分からないが、 照れたように地面を見て表情を隠す優葉にますます愛らしさを覚えた。

(………彼氏はいない、と言っていたな)

昼間、優葉に尋ねた質問でそれを確信した李人は、それからというもの優葉に自分の想いを伝えたい衝動に駆られて仕方がない。

(今の撮影が終わるまでには………優葉に言いたい)

いつも、優葉だけを見てきたのだと。

人気俳優になるよう努力してきたのも、勿論、自分自身で初めて見つけた夢だからだということもある。

しかし、それと同じ程、優葉に凄いと良い男だと認めてもらいたかったからだと………伝えたい。

李人は、強く強くそう思った。

「わぁ………。 それにしても、露店の食べ物って何で全部美味しそうに見えるんだろう?」

一方の優葉も、そんな李人の葛藤を知らず、目の前に広がる様々な露店に目を奪われていた。

そんな子どものような愛らしい優葉を見た李人はクスリと微笑む。
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