君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「………え」

その瞬間、李人はなぜ斎木がギリギリまでこのドラマの話を持ち出さなかったのか理解した。

ーーー優葉と別れた日から、ずっと埼玉には帰っていない。
仕事が多忙過ぎたというのもあるが、帰省してしまうとどうしても思い出してしまう。

優葉と見た景色、風景。 それに伴い好きだった頃の激しく、彼女を求めていた時の感情。

そして、それは今でも李人の心をこれでもかというほど縛りつける。けれどーーー

「李人。………受けるにしても、舞台の調整を願い出るか。埼玉でなく東京のスタジオ辺りでーーー」

「………いえ、大丈夫です。やらせて下さい」

その李人の答えを聞いた途端、斎木は目を丸くした。

「………良いのか?」

「話は大分進んでいますし、無下に条件は入れれない。何より………見せないといけない。 俺はもう、平気だって事を。これからも、埼玉県を舞台にした仕事の話なんて山程来るでしょう。その度に断ってたら怪しまれてしまう」

「李人………」

「だから、世間にも仕事の人間にも………見せないといけない。俺はもう………平気だと」

そう。ーーー"平気だと見せないといけない。"

李人はそう自分に言い聞かせた。


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