君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
「まだ選んでるなら、俺から取らして」
「あ、ご、ごめん………」
優葉は、そう言うと和泉がサイダーを取れるよう、 和泉の後ろへとうつる。
そして、優葉の目にうつったのは………バケツとその中にある雑巾や線香だった。
(また、瀬名君………こんな物持ってる)
「………この間も持ってたね」
「何?」
「それ」
そう言って、優葉は和泉の手にあるバケツを指差した。
和泉が公園で泣いていた日、手にしていたもの。 それを再び見てしまっては、無視せずにいられなかった。
「………ったく、 そんなとこまで見てたの?」
そう言って、和泉は頭を掻くとバツの悪そうな目で優葉を見た。
「気を悪くさせてごめんね。 けど、やっぱり私、瀬名君が心配なの。 そのバケツがあの日、瀬名君が泣いてた事と関係ある気がするから………。
だから今、思わず触れてしまった。だけど、今は良いの。 瀬名君が話したいって思えるようになるまで待つから」
「笹原先生って、本当にお人好しだね。 ………もしも、俺がずっと喋らなかったらどうする気? アンタ、ミイラになるけど?」