君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


「………駄目だな。こういう事は。 気持ちがないと」

「っ、どういうーーー」

優葉は、ふと李人の顔を見上げた。

そして、その李人の表情は先程の怒気は消えていた。

しかし、どこか哀情と切なさを帯びており、優葉は何も言えなかった。

同時に優葉と李人の間には、きまりが悪い沈黙が流れる。

「………優葉」

沈黙を破ったのは李人だった。 そして、戸惑いを隠せない優葉を見つめる。

「考えてみて。 なぜ………、俺があんな事をしたか」

「え………?」

「別に急がない。 けど、優葉。俺は………もう限界」

そう言うと、李人は優葉の胸まである細くて柔らかなダークブラウンの髪をそっと指でとかす。

「………それを分かって」

「っ、 李人君………?」

「じゃ、花火観ようか?」

そう言った李人はいつものように穏やかだった。

「う、うん………」

なのでそれ以上、追及する事は出来なかった。

その後、優葉が見上げたのは昔、李人と観たものと同じ夜空に咲く美しい花火。

しかし………、本当に同じなのか?


なぜか、そのような問いを優葉は抱いたーーー。
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