君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
優葉と李人が、どのような関係かは分からない。
李人の出身が埼玉県とあったので恐らく古い友人か同級生だろう。
しかし、どうであれ………和泉が導いたのはある仮説だった。
ーーーそれは、李人は優葉を想っているという事だ。
しかも………、かなりの高確率で。
優葉は気付いていないだろうが、先日、コンビニで李人が和泉に突っかかるような態度を取ったのは大方、その為だろう。
『………にしても、ムカつく。何で俺を最後まで目の敵にしてた訳?』
(あの女は、俺にとって受験までのただの塾講師。あの女にとっても………俺はただの生徒。 あの女も………そう説明していたはずだ)
『それだけ、だ』
(なのに、どうして)
ーーーなぜ、優葉を想う李人が有名だと苛立つ?
ーーーなぜ、優葉が親しげに李人の名を呼ぶのを嫌う?
ーーーなぜ、優葉の笑顔が………頭から離れない?
『ハッ………。ここまで考えといて何も解決しないなんて………一体何なんだよッ!』
和泉は腹立たしさを抑えきれないまま、真ん中の出窓を右の拳で思いきり叩いた。
その拳が、やけに酷く痛んだ。