涙の、もっと奥のほう。
家路に着いたのは昼頃だった。

家に着くとすぐ一番奥の部屋に走って行って、お母さんの仏壇の前に座る。

これが私の毎日の恒例行事。

お母さんに一目会いたい…その一言をなかなか言えないで、お母さんの遺影を眺める私がいる。

遺影の中でお母さんは満面の笑みを浮かべていて、その顔は少し私に似ていると思うぐらいでほとんど似ていない。

そう、私はお父さん似。

お父さんなんか見たこともないのに、自分にお父さんのかけらを感じる。

悩んだ事なんてないけど、この場所に来ると涙が出そうになる。

この日の私は十五歳。

中学三年生になった夏。
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