涙の、もっと奥のほう。
不思議な出来事は、その次の日に起こった。

学校にある廊下で一人、授業をフケていた時。

「…え…???」

確かに背中に誰かの視線を感じた。

とても温かい、愛情がこもった視線。

全然怖くない。

『龍奈』

誰かに呼ばれた気がして周りを見渡す。

聞いた事のある、ハスキーだけど優しい声が確かに聞こえた。

『今夜、あいにいくよ』

耳元でそんな声が聞こえて、風が吹き抜けていった。

私は確信した。




おかあさん…





今夜私に会いにきてくれる…お母さんが私の所に??

珍しく最終の授業まで残って考えていた。

窓の外を風が吹き抜けていく。

蝉の声が鼓膜に焼き付くほど響いている。

今日は暑い。
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