ミントブルーの純情
やけくそでテキトウにいろんな数字を打ち込んでいたら、突然みつのスマホのロックが解けた。それはつまり、私が今打ち込んだ数字がみつのパスコードだっていうこと。
「解けた?」
「え、ああ……うん」
みつがゆっくり振り返って、私の手にある自分のスマホを見ながら「ほんとだ」って笑った。
「……俺のパスコード、なんだった?」
「なんだったって……」
「解いたんだろ?」
「……私の誕生日」
「うん、そーだよ」
今度はみつの顔を見れなくて、開いたままのみつのスマホをずっと見つめる私の頭に、みつが優しく手のひらをのせた。
いつからだろう。みつの頭を撫でていたのは私の方だったのに、いつの間にかみつのほうが私を撫でることの方が多くなってしまった。
「……伊藤とより戻すの?」
「戻さないよ」
「……じゃあパスコード変えて」
「……みつの誕生日に?」
「それは、あおに任せるけど」
みつの骨ばった大きな手が、頭からするりと私の頬に落ちて来る。その手つきに胸が鳴る私はおかしいのかもしれない。
みつは弟なのに。
ドキドキするのは間違ってるのに。
「……みつの、誕生日にする」
私とみつの間にある、よく見えない色。いろんなものをすべて壊してしまいそうなその色は、多分きっと、このベットカバーとよく似ている気がして、ぎゅっとしわになるくらいそれを握りしめた。