クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
どうか怖がらずに。

あなたはすてきな父親です。


「さ、律己くん、朝の会の準備しよう」


玄関の中に律己くんを送り込み、保育士に預け、私はもう一度外に出た。

有馬さんは、なぜ私が一緒に中に入らなかったのか不思議がっているようで、きょとんと立っている。


「有馬さん、今、お時間少しありますか」


私の様子に、気軽な話ではないのを察したらしく、彼がはっと身体を緊張させ。


「はい」


いくぶん怪訝そうな、硬い表情で頷いた。




「律己の名前を…」

「おりますか、と言ってました。今思えば、身内の言い方ですよね」


玄関前は日陰がない。中に招き入れると律己くんが何事かと心配すると思い、マンションの横手の、建物の陰に移動した。

有馬さんがジーンズのポケットに両手を入れ、眉をひそめて黙り込む。


「こちらからは、なにも伝えていません。律己くんが通園していることも、その日休んでいたことなども」

「ありがとうございます。でもおそらく、その男はもう、律己がこの園に通っていることは、確信しているんでしょうね」


そうだと思う。押し掛けてくるくらいだもの。


「どなただか、心当たりはないですか?」

「ないですね。スーツって時点で、まず人種が違いますし」

「あの、もしかしたら…」

「律己の父親?」


さすが彼は、瞬時にその可能性に達したらしい。

ちらっと私と目を合わせ、またなにか考え込むように視線を落とした。
< 117 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop