クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
大きなスーパーのほか、内科やこどもクリニックなどが入った施設の、二階の高さにある中庭は、買い物帰りの日光浴を楽しむ人たちがちらほらいる。

片足で飛び跳ねるようにしてそこへ出て、きょろきょろしていたら、隅の喫煙所のほうで人影が動き、それが有馬さんだったので、私はびっくりしてしまった。

片手をジーンズに引っ掛けて煙草を吸っていた彼は、私を見つけるとすぐに灰皿に煙草を捨て、こちらにやってきた。


「どうでした?」

「あの、骨には異常なしとのことだったので、湿布と痛み止めだけ…」


言いながらも、彼がお尻のポケットに煙草をしまうのを、ついじろじろ見てしまう。それをなにか誤解したらしく、有馬さんはぎくっと動きを止め、「律己のそばでは吸ってないですし」と急に言い訳を始めた。


「あっ、いえ、そんなつもりじゃ。ただ…吸われるんだなと思っただけで」

「吸いますよ。家の外限定ですけど」

「家で吸わないのは、律己くんのためですか?」


偉いですね、というつもりで言ったのだけど、有馬さんは腰に手をあて、「や、というよりは、昔からの習慣で」と呟くように言って、脇のほうに視線を投げた。

その先では当の律己くんが、点々と植えてある立木をくるっと囲む円形のベンチに座って、アイスを食べていた。私を見つけると、無事だったことに安心したのか、チョコレートで汚れた口元をにこっとほころばせる。

あ、と思い出した。

今のマンションは、律己くんを身ごもって戻ってきたお姉さんと住むために、用意したのだ。あそこで彼が煙草を吸ったことは、一度もないに違いない。

不用意なことを言ってしまった。


「ゆっくり食ってていいぞ」


有馬さんが律己くんに声をかけた。もう帰るのだと思った律己くんが、急いでアイスの残りを片づけようとしていたのだ。父親の指示に、ほっとしたようにアイスから顔を離し、こくりと頷く。


「あ、もしかして先生は、早く帰らないとまずいですか?」

「いえ、大丈夫です」


彼の気づかいに、手を振って答えた。

今日は車から荷物を降ろし、園の倉庫に入れたら解散だし、その作業はもうそろそろ終わる頃だ。
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